2017-09

シルクロードの天山北路を通って中国からカザフへ

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『ツール・ド・シルクロード10年計画』の第3次遠征で、中国のウルムチ近郊から天山北路を通って、ホルゴス国境からカザフスタンに入国した。カザフスタンに1時間ほど滞在してサイクリングし、すぐに中国へ再入国した。1日の休養の後に、再びイーニンをめざした。

出発したのは9月3日、中国ではイベントがあり、日本からの飛行機が北京に到着しないと、Facebookに書き込みもあった。事前に航空会社に電話して、北京で乗り換えてウルムチへ行けることを確かめていた。

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道路一面にトウガラシを干している光景も見た。誰の胃袋にあんなにたくさんの唐辛子が収まるのだろうか。

天山北路は、カザフスタンを通って中央アジア、イラン、トルコ、ヨーロッパを結ぶシルクロードの交易路で、今でもトラック輸送に利用されている。イランをサイクリングしているとき、トラックドライバーと同じパークエリアで休憩することがあった。温かい紅茶をいただきながら「アルマトイからTシャツを運んでいて、イスタンブールに届ける」と話してくれた。

帰りの便では、何を運ぶのかと聞いてみると「イスタンブールに行ってみないとわからない。カラでは帰らない」と言う。3台ほどのトラックが、常にいっしょに走っているという。何かあればすぐに助け合うのだろう。

ラクダで砂漠をゆく時も、ジープで砂漠をゆく時も同じだ。シルクロードは、今でも多くの難所や気候の変化による立ち往生等があるのかもしれない。助け合って、危機を脱出するのだろう。

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市場で野菜を売っている人は多い。

砂漠は厳しいようだが、オアシスでは野菜が美味しいし、果物も豊富だ。もちろん美味しい。原産地を調べると南米、地中海、東南アジア、アフリカ、西アジアといった野菜や果物がバザールで並んでいる。日持ちや栄養価を体験的に知り、シルクロードで食卓に上がるようになったのだろうか。多くのキノコをバザールで見かけたし、食堂や宿で食べられるのもオアシスの意外な一面だ。昔は知らないけれど、同じかも知れない。

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小麦粉を練って細長くしたうどん状になっている麺、その上に調理した野菜をかけて食べる拌麺。中央アジアではラグマンと言われている。金子民雄氏は、この麺を「パスタ」と表現していた。確かにコシが強くてスパゲティーの感じ。

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道路に干していた南米原産のトウモロコシ。

天山北路には、カザフ族、モンゴル族、ウイグル族、回族、漢族など12の民族が暮らしているようだ。お店の看板を見ていると、ウイグル文字、モンゴル文字、中国語の漢字の3種類の言語を話す人、民族が暮らしていることが分かる。いろんな民族や人がシルクロードを利用していたからだろうか。

トウモロコシを道路に干している光景も見かけた。麺やお粥になるのだろうか。

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自転車を持って水たまりの脇を通るメンバー。

今では、天山北路はもちろんシルクロードのほとんどが舗装されている。しかし、時には砂利道もあり、水たまり、沈下橋もある。1993年からシルクロードをサイクリングしているが、洪水で道路が流されて、石畳のようなダートを40キロ以上進んだり、橋が流されたために膝まで水に浸かって渡河したこともある。車の轍を確かめながら、ペダルを踏んで渡河したこともある。だから、どんなタイヤが適しているかと聞かれても、答えようがない。私にはわからない。シルクロードを1000キロ走るのも、日本を1000キロ走るのも同じように考えたらいいように思う。

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オアシスで出会った子供たち。

オアシスでは、野菜や果物だけがいろんな地域からシルクロードに集まっているわけではないと思った。人間もいろんな血が混ざっている感じだ。それにしても、声援を受けるとペダルを踏む足に力が入る。バザールで話しかけられると、とてもリラックスする。

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天山山脈の支脈の峠近くで宿泊。

天山北路を進むと、ホルゴス国境の手前で天山の支脈の峠を越えることになる。標高約2200メートル峠の脇には、周囲40キロメートルの湖があった。海のように青い湖だった。山の北側の斜面は岩山だが、北側の斜面には松の木が生えていた。松の木が岩山で稜線を描き、きれいだった。朝日を浴びたときはとりわけ綺麗だった。滞在日数が少ないので、夕日に赤く染まる山並みを見ることはできなかった。次回の目標としたい。

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親子でトウモロコシをはしているウイグル族の家族。

中国とカザフスタンを結ぶホルゴス国境では、中国側で厳しいチェックを経てカザフスタンへペダルを踏んで向かった。約7キロメートルの緩衝地帯を走ると、カザフスタンに入国。とても陽気な兵隊が出迎えてくれた。中国とカザフスタン、故郷の係官の態度は、どうしてこんなに違うのだろうか。

一旦、中国を出国しカザフスタンに入る。そして、再度中国に入る。
中国では、日本人は15日を超えるとビザが必要になる。そこで、一旦カザフに出て、中国に再入国することで、中国でのビザなし滞在をさらに伸ばす。これもカザフに入国した目的だった。そのために、遊びのように出入国を繰り返したのだった。

中国へ再入国の際、国境の係官に、「さっきカザフへ行ったばかりじゃないか。どうして、すぐに中国に帰ってきた」と問われた。ラッキーなことに、それに答えるほどの英語力が私にはなかった。

尚、これまでの手記を読んだ上では、この国境を通るにはバスの利用を強いられていたようだ。しかし、今は自転車での通行が認められている。

わたしは、昨年は敦煌の近郊で脳梗塞で倒れている。中国で入院、日本でも入院して自転車に乗られるまで回復した。ところが、今年になって不整脈で入院することになった。さらに心臓の冠動脈が9割ふさがっていることが分かり、ステントを入れる手術をしている。

手術後、3ヶ月は安静と医師に言われているのだが、「この国境は今通らないといつ自転車での通行を認めなくなるかわからない」と医師に話して、緩衝地帯を往復する14キロを自転車でゆく許可を得ていた。もちろん、ほかのメンバーは、ウルムチ近郊からずっと走ってきた。

この国境を人力で通るのは、珍しいこと。特に平均年齢70歳を超えるグループが通るのは、滅多にないことだ。次に続く人たちが出る事を願っている。

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ウイグル音楽を演奏する親子。

ホルゴス国境を人力で通ったあと、車でウルムチへ帰った。ウルムチは初めてというメンバーもいるので、バザールをガイドに案内してもらった。ウルムチのバザールは変わっていた。肉や野菜、包丁など、生活に必要なものは何でも扱っている風だったのだが、楽器やスカーフなどの民芸品を扱うデパートに変わっていた。以前は、ビルの中ではなく、通りになっていたのだが。

それに、公安の警備が多い。車の乗り入れもうるさい。

「以前のように生活に必要な野菜や果物、肉などを売っているバザールはなくなったのか」と聞くと、「『地球の歩き方』にこのバザールを紹介しているので、日本から訪問した人はこのバザールでないと納得しない。同じ風景と写真が欲しいのだ」という。

ウルムチ空港は、利用者の姿からも空港の職員の姿からもウイグル棒もスカーフも消えていた。もちろんウイグル族の彫りの深い風貌も消えていた。とはいえ、空港ががらんとしており、長蛇の列に並んで時間をかけて空港に入る必要もなくなった。

これからは、サイクリングの後に、一般のウイグル族や庶民が買い物に訪れるバザールで雰囲気を味わいたい。彼らが食べている葡萄やハミウリも食べたい。そんなウルムチ訪問を夢見て、ビルの中にある観光客相手のショップで、ウイグル親子の演奏するウイグル音楽を聞いていた。音楽もリズムも、昔と同じだった。この点は救われた気分になった。
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